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業界を斬る!コラム(10)
教育とメディアの欺まん 2002年1月30日
 
 ≪義務教育のウソ≫

 1月26日付の毎日新聞に「日教組研修会」の記事が載った。概略を述べると、宮崎市のシーガイアで行われた日教組の教育研究全国集会で、「学力低下の懸念に対する取り組みや、子供たちの学習意欲を高める実践」の報告があり、インタビューという形で茨城県の女性教諭の発言を取り上げ、結局のところ今までの教育方法が正しいということを述べただけの実にお寒い取り組みだ。

 そもそも、そのような取り組みを行うのに、わざわざ宮崎で、赤字まみれのシーガイアで教育を論じることの意味もわからないが、戦後教育の左化を計ってきた日教組ならやりかねないとも思える。

 記事では、中学生の英語に対する興味が1年で50%、2年で35%、3年で31%と下がっているにもかかわらず、原因は会話中心の授業にあるというような発言だから驚く。こういった教師の元で英語嫌いを量産させられた子供が大人になってから英会話スクールで苦労するのだから、英会話スクールの労力には同情を禁じえない。


 ≪メディアのウソ≫
 
 この記事を取り上げた毎日新聞は、事実を述べただけであるのかもしれないが、どうも後ろに胡散臭さが残る。なぜなら、この4日前に行われた文部省懇談会の提言で明石康・元国連事務次長などを招いて開かれた英語教育への発言については記事がないからだ。

 朝日新聞「使える英語教育を」と題して「中学、高校で勉強しても一向に話せるようにならない」という出だしで。読売新聞も同様の記事を載せ、このままの英語教育ではいけないという危機感と、大学や小学校での更なる英語教育の必要性を述べている。
 毎日に記事はない。

 なぜ毎日新聞には現教育を肯定する記事しか載らないのか。情報操作の可能性が見えてはこないだろうか。英語教育に携わったことのある者であれば、既に中学高校と6年間英語を勉強して全く会話のできない実情を良く知っている。いや、一般の人たちもよくわかっているはずだ。
 であるのに、現状教育を肯定して会話中心の教育を全否定するのは被教育者を向いて仕事をしない日教組と毎日新聞にはわからないらしい。いや、わかりたくないのか。


 ≪言語学の視点から≫

 既に多くの英会話スクールでは、反復練習によって身につけるオーディオリンガルの手法から、コミュニケーションによって英会話を身につけるコミュニカティブの手法への移行が良く見られる。または、発音や、映画を使うなどの特化を行って必要スキルを身につけることができるようなアプローチ方法も確立してきたようだ。これもコミュニカティブの一種と考えていいだろう。
 これに反して学校教育では1800年代後半に主流であった、文法や構文、単語を暗記するといったレトロな手法が利用されている。

 学校教育と英会話スクールを同列に論じることはできないものの、現実に英会話スクールの留意点はこのような義務教育を終了して、観念も、勉強方法も誤った方向に、また興味は尽きてしまった顧客を相手にしなくてはならないということだ。
 近年では傾向は薄くなったが、毎日新聞などのメディアが醸成する社会の空気とも戦っていかなくてはならない。

 結局ジレンマであるのは、英会話スクールの質が上がれば上がるほど、経営者が努力すればするほど、サービスが良くなればなるほど、それを初めて体験する生徒との格差は広まる一方であるということだ。
 せっかくいいものを提供しても、消費者がそれをいいと思ってはくれない土台がある。
 サービスもマーケティングも難しいと言わざるを得ない。

 困難な時代に、足元の売上を確立することも重要だが、根本的な土台を、せめて注視しておく必要性はおわかりいただけたのではないかと思う。